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スタジアムと認知と経済(2)〜隣の芝生は青くない

この現象は、「保有効果」と呼ばれ、いろいろな経済のシーンで見られます。

例えば、同じチャートを見ても、自分が保有している株は「上がるかも?」という心理的バイアスが働き、売るのをためらいます。逆に、自分が保有していない株は「下がるかも?」と考え、買うのをためらいます。

この心理は、心理学的には「現状維持バイアス」と呼ばれ、やはり経済学以外にも様々なシーンで見られます。例えば、大きな地震などの災害時に、今いる地点から別の地点に避難するかどうかを検討するときに、「移動する事にリスクがあるのでは?」「ここに留まった方が安全なのでは?」というバイアスが働きます。

人間は、自分の現状をなるべく変えたくないのです。持っている物はできれば手放したくないし、進んでいるものを止めたくない。これは、人間として自然な事なのです。その結果、「自分が保有している物」は、他人から見る価値よりも高く見えるように脳が働いているのです。

「保有効果」を使った経済活動の戦略

では、行動経済学における「保有効果」を実際のスタジアムに持ち込むには、どうしたらいいか考えてみます。

例えば、初観戦の人に、1000円以上の購入で使える300円分のグッズ購入に使える当日限定のクーポンを配布したとします。

これによって、経済的に最も効率的な選択は何でしょうか?1000円のグッズを買う事でしょうか?正解は「何も買わない」事です。クーポンを使うために、700円以上の購買が発生するからです。

しかし、私たちには「保有効果」が働くので、既に「明日には紙切れに変わる300円を保有している」のと同じになります。そのため、それほど欲しいと思っていなかったグッズを追加で購入したりする事もあります。

すると、初観戦の人にとって、実際に支払った金額は700円でも、「1000円の物を買った」という認識になります。そのグッズは、さらに保有効果によって「自分にとって価値のあるもの」に昇華するのです。