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スタジアムと認知と経済(2)〜隣の芝生は青くない

他に、「保有効果」に関連する経済用語で、「サンクコストの誤謬」というのがあります。つまり、既に消費されたコストのあまり、判断を見失うという現象です。

例えば、前売チケットの1試合あたりの金額が3000円で、当日券と一緒だとします。

  • あなたは前売券を持っていますが、当日雨でした。試合に行きますか?
  • あなたは3000円を持っていますが、当日雨でした。試合に行きますか?

これは、当然、前売券を持っている人の方が試合に行く人の割合が増えます。「雨だからやめようかな」というのは、前売券がただの紙切れになってしまうからです。

しかし、前売券を買った人は、「既に3000円を支払っている」という以外は、当日券を買うつもりでいた人と条件は変わりません。つまり、既に3000円を支払っていようがいまいが、「雨の中、交通費を支払って移動し、90分の試合を屋外で観戦する」という経済的・時間的・精神的なコストは同様にかかるものです。

ならば、天候のリスクなどを考えると、やはり当日券を買った方が安全な気がします。だから、前売券は当日券よりも少し安いのです。もちろん、他に「前売の発券枚数から当日の動員数を読みやすい」など、前売を多く買ってもらうメリットは他にもあります。しかし、前売券を購入した人は、当日券で入場しようと思っている人よりも、「観戦に行こう」という頑張りが大きくなるのです。

サッカーファンの奇妙な行動

このように、行動経済学の研究は、前回のエントリーの「スタジアムと認知と経済(1)〜サッカーはファンを不幸にするか」で述べた通り、「サッカーファンは合理的な思考をしないし、損失しかない」という事を検証したいわけではないのです。むしろ、「合理的に見ると試合結果による心理的ストレスの蓄積は大きいのに、なぜサッカーファンは実際は不幸ではないのか」を考える研究です。つまり、「サッカーファンが実際は幸せである」という実験結果との差分が大きいほど、この研究には意義があると言えるものです。

この研究は、サッカーファンの消費行動や経済活動の分析、つまりマーケティングに大きく寄与するものだと思っています。この「行動経済学」が「統計学」と「スポーツマーケティング」への融合していく事で、「スタジアムに足を運ぶ」という行動原理はもっと明らかにされ、スタジアムへの集客に繋がっていくと考えています。